起業女性インタビュー

【vol.1】二児の母から里親になってーファミリーライフアドバイザー渋谷佳子さん

「全ての子どもの命を大切にしたい」二児の母から里親になって〜渋谷佳子さんインタビュー〜

ファミリーライフアドバイザーとして活動している渋谷佳子さんは、約14年の保育士と自らの子育て経験から子育てに自信が持てないと苦しむ母親へ、子供に限らず、夫婦、家族関係の再構築をサポートしています。そして、二児の母でありながら里親になるという選択をされその事を記したブログが多くの共感を得ています。

そんな渋谷さんに、子育ての事、里親になる事、子供たちの未来について伺いました。

−里親になろうと思ったきっかけを教えてください。

10年以上前からずっと思っていました。強く意識したのは、保育士時代に、虐待されている4歳の子供と出会った時でした。全身に痣があり「僕が良い子になれば叩かれないんだ」と言った事に衝撃を受けました。

4歳しか生きていない子が自分を責めて生きている、お母さんのために生きている。この子がどうやったら未来にワクワクするのかな、もっと自分の将来を楽しみに思えるのかなと。

その時から自分に何が出来るだろうと自問自答が続きました。そこからまた全然答えも出なくて。

一時預かった後は児童相談所に措置されていくのですが、愛着が育っていないので泣かないで喜んで行ったんですね。その姿は今でも忘れません。そこから、血の繋がり関係なく今この世にある子どもの命を大切にしたいという「里親」になる覚悟が決まったと思います。

−里親になりたい、と決めてご家族の反応はいかがでしたか?

実はその時は私自身も子育ての暗黒期の時に被っていて。夫からは「絶対に今のお前じゃ無理だ」と言われてしまって。でも私もうそう思ったんですよね。自分の子育てに自信が無い状態で人の子なんて育てられないなと。そこから、まずは自分の子育てを、と心理学やコーチングを学び始めました。

大変な時期も過ぎて小学生、中学生になって子育てもまあまあ落ち着いてきていて。長男の野球チームの子など、友達連れてきたりとか他人の子もかわいいと思えるんだ、と自分でも思ったみたいで。そういう経験もあっての承諾という感じですね。

−育児を挫折した経験があるのですね

はい。長男が小学校2年生の時に、床に頭をぶつけ始めて髪を抜き始め「もう僕なんていなくなればいい」と言い始めまして。私は保育士だったから、プライドもあってまさか子育てで失敗しているなんて人に相談できず、一人で抱えて頑張ったのですがうまくいきませんでした。

今思えば、保育園にいる子供は家庭にいる時と違って「頑張っている」状態なんですよね。その頑張っているいい子供像、というのを自分の子に求めてしまった事が原因だったと思います。

本当にこの時期はどん底で、義母との折り合いも悪く職場でも悪口言われているなど人間関係も最悪でした。

−それは大変でしたね。どう乗り越えたのですか。

でもそこから心理学やコーチングを学び、自分と向き合ったら息子家族も変わっていきました。そして周りに伝える事で変化していく事がわかりコーチとして独立をしました。

−里親になった時のことを教えてください。

本当に偶然なのですが、全国里親協会の代表の方と会う機会がありました。その方とお話ししていたら、やっぱりやりたいという想いがドバーッと溢れました。

そしてその翌日には児童相談所に電話をして、研修の予約をしていました。里親というのは登録してから委託されるまでに通常は期間があるのですが、保育士経験がある事が決め手になったようですぐに依頼が来ました。

−もう、その出会いが運命ですね。でも相当な覚悟が必要だったのでは?お二人のお子さんがいて里親になるという方が珍しいと思いました。

はい、運命でした。覚悟というよりは、やっとやれたなという感覚なんです。

−里子くん(4歳)が入って家族の変化はいかがでしたか?

長男・次男ともに里子くんを可愛がってくれました。こんなに可愛がれる力があったんだ、と我が子の新しい一面を知る機会が増えました。

ちょうど引き受けた後に、長男が高校入学し寮生活になると決まったのですが。里子くんがいなければ、次男と二人きりになる時間が増えていました。2人だけだと喧嘩ばかりしていたのですが、里子くんが来てくれた事笑顔も増えたし、楽しい時間というのも増えたんです。

−みんなが幸せになる、素晴らしい変化ですね。ちなみに、我が子と里子くんで接し方など違うのですか?

思いのほか変わらないですね。逆に私は変わらないのですが、周囲からは「かわいそうな子」って見られる事が多い事が気になったりはしました。

私自身もどこかでそう思っているのかな、と思う時もあります。でも気にならずに怒った事も全然言いますし、叱る時は叱るし。楽しい事もいっぱいあるし、とプラスに捉える事の方が多いです。3人目だからさらにゆとりを持って関われるから1番穏やかに関わっているのはありますけどね。

−里親制度に興味がある方は、いらっしゃると思いますがやはり勇気がいる事だと思うんですよね。

そうですね、もちろん楽ではないんですよ。大変な事も沢山あるのですが、お金で買えない価値がそこにはあって。里親を通じて、自分自身が本当に成長できています。

例えば、週末里親とか、シングルのお母さんがインフルエンザになった時に1週間だけ預かるとかも全然可能なんですよ。なのですごいハードル高く感じている方にも、色々な選択肢があるよ、とまずお伝えしたいですね。

−里親になりたい方の相談会・交流会にも参加されているそうですね。

そうなんです。地域の自治体でも開催されている所は増えてきていますが、私はNPO法人日本こども支援協会さんが主催している会に参加させていただいています。

お話しさせていただくと本当に素晴らしい人がいらして、50代の塾の講師をしている男性で、ある程度の学力をつけて社会に出てほしいという想いで里親になったという方もいらっしゃいます。里子というのは、幼児、小学生だけではなく中学生、高校生を引き取りたいという人とかもいるんです。逆に。

−色々な家族の形が増えて、すばらしいですね。

そうなんです。逆に、自分で育てられないと自分を責めてしまったり虐待してしまう母親にも、「育てたい人に任せる」という選択肢もあると思っています。里親になる方も自分の人生を生きる子供も大人も増えたら良いなという想いが強くなりましたね。そういう大人が増えてくれたら、子供の未来のためにもなると思っています。

−現在は小・中・高校生へのキャリア教育講師としても活動されていらっしゃるのですね。

そうなんです。3年前からキャリア教育支援活動を行なっているNPO法人キーパーソン21の想いに共感し、わくわくエンジン®️講師として活動させていただいております。

キャリア教育にも様々地方によって変わるのですが、AI時代に伴い職業がなくなると言われている中で、子供と職業ではなく、内側から湧き出るワクワクする事と職業を繋げよう、という事が伝わればいいなと思っています。

ワクワクを軸に自らが未来を切り拓き社会貢献できる力が持てれば、子供たちの未来はもっと輝くのではないかと思っています。

−これからの日本の教育に必要なものですね。

そうなんです。今は全て順位をつけたり人と比較する。受験も良い大学に合格させる、のような教育がまだ根強いんです。性教育も含めてそもそも命を大事にするとかという教育がまだまだ少ないですし、プール授業とかも先生がピッて吹いて皆が泳ぎだすみたいなもの。で、泳げる子と泳げないこの差がめちゃくちゃ出るとか。これでは、子供が伸びないと危機を感じています。

−家族の在り方や社会がこんなに変わっているのに教育だけは変わっていないんですね。

一部新しい教育方針を取り入れている学校もあるのですが、うちは新潟なのでそこまで全然追い付いていないのが現状ですね。

−そうなると尚更、親の選択が重要になりますね。

そうなんです。親もそうですし、先生だったり第三の大人と関わる機会を子供に知ってもらってこんな世界もあるんだとかこういう価値観があるんだと子供たちが知れたらもっと世界広がるかなと思っています。

=========

保育士の経験、保育士ならではの自らの子育ての挫折と学び。そしてその経験から「全ての子どもの命を大切にしたい」という想いが芽生え里親になるという選択をされた渋谷さん。

一つ一つの言葉に一つの覚悟が感じられました。コロナ禍で家族の関係性、人との繋がり方が問われる今だからこそその在り方・生き方は胸に響くものがありました。(取材年月:2021年6月)

プロフィール

渋谷佳子(しぶや・けいこ)

1981年新潟県生まれ、中3・小6・4歳(里子)男子の母。14年間の保育士、病児保育室主任の経験、延べ1万人以上の親子・家族と関わり、2018年に子育てカウンセラーとして起業。DV、虐待、セックスレス、浮気、不倫、モラハラ、パワハラなど夫婦、親子、家族、パートナー、人間関係全般の関係再構築をサポートしている。1年間で600件以上のセッションを行う。自身の里親としての体験なども含めた発信が共感を呼び、里親になりたい方へのサポートも行っている。

・保育士養成専門学校非常勤講師
・認定NPO法人キーパーソン21
・チームにいがたリーダー

ABOUT ME
アバター画像
高橋陽(編集長)
崖っぷちアラサー派遣から2012年独立。10年間3000名以上の456ミドルシニア世代起業女性へブランディング・文章の指導を行う。2022年人生100年時代ライフシフトを提案する生き方改革メディアを立ち上げる。
インタビュー掲載希望の方へ